第29章 私の鼓動に触れられるか?

江川莉奈は困ったようにうなずいた。この機会に梅原晴琉へ婚約の件をきちんと話しておこう。あとから誤解がこじれるのはごめんだ。

彼女が先にリビングを出る。梅原晴琉がすぐ後ろにつき、二人は肩を並べて歩いた。背筋がすっと伸びた立ち姿に、釣り合った雰囲気――遠目にも絵になる。

田原匠真は空気を読んで距離を取り、少し離れてついていく。内心、思わずため息が漏れた。

江川莉奈さんのほうが、田口七海より百倍まともだ。

数えるほどしか会っていないのに、江川莉奈さんは終始きちんとしていた。対して田口七海は会うたび鼻先を上げ、指図口調で、まるで呼べば来て当然の下僕扱いだ。

――いや、俺は梅原さんの右腕なん...

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