第57章 国際的ピアニスト

江川莉奈の言葉はふわりと軽い。けれど、その一言で田口七海は言葉を失った。

数秒固まってから、ようやく我に返る。声はさっきよりもいっそう震えていた。

「わ、私……冗談で言っただけなの、姉ちゃん。ほかに意味なんてないよ。ただの冗談……! 姉ちゃんに何かを変えろだなんて、そんなの言えるわけない……!」

江川莉奈から見れば、その言い訳は穴だらけだった。だが相川綾子は母性で目が曇っている。七海の言葉を、あっさり信じてしまう。

相川綾子は、泣きじゃくる田口七海の顔を見て胸がきゅっとなった。さっきまでの失望や冷え切った気持ちも、半分ほど溶けていく。十数年育てた子に、そこまで厳しくすることなどできな...

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