第72章 遅刻

第二ラウンド決勝は、抽選で出場順が決まる形式だった。午前中、近藤希美が引き当てたのは「4番」。その番号札を見た瞬間、江川莉奈は胸のつかえがすっと下りた。

――とはいえ、近藤希美の出番まで残り50分もない。猶予ゼロ。

江川莉奈は即座にスマホを取り出し、山口夏美へ電話をかけた。

「夏美、説明してる時間ない。今すぐ、ピアノのコンクール用のドレス一式を用意して。靴もセットで、ヒールは高すぎないやつ。それとメイク道具も。国際音楽センターの隣の万悦ホテルまで、最速で届けて!」

『了解。すぐ手配する。30分以内に届けるね』

通話を切るや否や、江川莉奈は呆然としている近藤希美の手を掴んで万悦ホテル...

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