第73章 時間を守らない者に優勝を手にする資格はない

ステージの上。近藤希美はひとりスポットライトを浴び、客席から湧き上がる抗議の声に晒されながら、華奢な身体を小さく震わせていた。

田口七海は彼女を射抜くように睨みつけ、江川琉衣も横で火に油を注ぐ。選手たちのざわめきは煽られ、圧は増していく。

空気が膠着した、そのときだった。司会が口を開くより先に、審査員席から落ち着いた低い声が響く。

「近藤希美選手の演奏を認めます。続行に、私が同意します」

一斉に視線が向く。そこにいたのは、審査委員長フェンディ。背筋の通った立ち姿は、それだけで場を抑え込むだけの重みがあった。

決勝が始まってからというもの、フェンディの心はずっと江川莉奈に引っ張られて...

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