第79章 年俸300万円で近藤希美と契約する

翌日、田口七海は人づてに近藤希美の連絡先を手に入れた。

ピアノコンクールが幕を下ろしても、近藤希美は京清市を離れていなかった。初めて訪れた街だ。せっかくならあちこち歩き、景色を写真に収めて、地元に帰ったら先生や同級生に見せたい。

優勝賞金は50万円。山あいの貧しい家に生まれた彼女にとって、いまの暮らしを変えかねない大金だった。

京清市の街をひとり歩いていた、そのとき。

知らない番号から着信が入る。

近藤希美はおそるおそる通話ボタンを押した。受話口から、穏やかな声が流れ込む。

「希美、覚えてる? 田口七海よ。昨日、同じステージで競った選手」

その名前を聞いた瞬間、近藤希美の体がこ...

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