第80章 怖がらないで、すぐ行くよ

個室内の空気は重く、息が詰まるほどだった。近藤希美は目尻を赤く染め、瞳の奥で涙がきらりと揺れている。必死に下唇を噛みしめ、零れ落ちるのを堪えた。

京清市に来て――これで二度目だ。「人の心はこんなにも意地が悪い」と思い知らされたのは。そしてそのどちらも、田口七海のせいだった。大都会のきらびやかなフィルターは、彼女の執拗な圧力の前で粉々に砕け散っている。

「……ど、どうしてそんな……無理やり……」

近藤希美の声は小さく震え、強がりと、どうしようもない無力感が滲んだ。

田口七海は、その頑なさに完全に苛立っていた。言葉はさらに鋭く、刺々しくなる。

「こっちは年収300万の道を用意してやって...

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