第1章
私は死んだ。
私は今、自分の夫、村上英一郎が、まるでただの事件ファイルでも扱うかのように、私の亡骸のそばにしゃがみ込んでいるのを見ている。ゴミ処理施設は腐敗と汚物の臭いが鼻をつく。でも、それよりもっとひどい何かが混じっている。
見て。私は肉屋さんの肉みたいにバラバラにされている。かつて村上佳奈だったものは四つか五つの肉塊になって、ゴミみたいに土の上に散らばっている。頭は完全に破壊されて、ぐちゃぐちゃに潰れた骨と脳漿があるだけ。まだ吐き気を感じられる体だったら、きっと吐いていた。他の警官たちはえずいて顔を背けているのに、英一郎は違う。私の愛する夫は。
頭がこんなにぐちゃぐちゃじゃ、彼が私だと気づけないのは当たり前だってわかってる。でも、心の奥底ではまだ、彼が私に気づいてくれるんじゃないかって、死んだのが彼の妻だってわかってくれるんじゃないかって、ほんの少しだけ期待している自分がいる。でも彼は違う。まるで何でもないことのように、メモを取っている。
ふざけてるの? 彼の胸ぐらを掴んで、歯がガチガチ鳴るまで揺さぶってやりたい。『そのズタズタの死体はあなたの妻なのよ! そこにバラバラになって転がっているのは、私なの!』
でも、私の叫び声は彼には聞こえない。誰にも聞こえない。私は死んで一週間、自分の夫が私の殺人事件を捜査するのをただ見ているという、この悪夢の中に閉じ込められている。
英一郎は、まるで買い物リストでも作るみたいに、手帳に何かを書きつけている。「女性被害者、年齢はおよそ25から30歳。バラバラ死体。推定死亡時刻は一週間前」彼の声は平坦だ。
ふと、自分の左手に気づく。結婚指輪がまだそこにある。ダイヤモンドが弱い朝日を浴びてきらりと光り、私は希望を抱く。
指輪。ああ神様、どうか彼が指輪に気づきますように。
これよ。これに違いない。彼は私の手を拾い上げて、私たちの結婚指輪を見て、すべてを理解するはず。自分の妻の無残な死体の上に立っていたことに気づくはず。そして崩れ落ちる。私の残骸を抱きしめて泣きじゃくり、こんなことをした犯人を必ず見つけ出すと誓うはず。
英一郎は、まるでゴミでも扱うかのように、私のちぎれた手を拾い上げる。指輪を検分すると、私の指からそれを抜き取り、プラスチックの証拠品袋に放り込んだ。
「結婚指輪、ホワイトゴールド、一粒ダイヤ。証拠品として確保」
それだけ?
それだけなの?
彼の目をえぐり出してやりたい。叫びたい。『この人でなし! それは私たちの結婚指輪なのよ! あなたが一年も貯金して買ってくれた! 結婚して五年、私が一度だって外したことのない指輪なのよ!』
殺されることより、この屈辱の方がひどい。彼は気づきもしない。自分の夫が、私たちの人生で最高の日を象徴する結婚指輪を見て、記録すべき証拠品としか思っていない。
どうして私は、あなたにとってこんなに見えない存在になってしまったの? どうして、あなたが私の指にはめてくれた指輪さえ思い出せないほど、価値のない人間になってしまったの?
ああ、私はなんて馬鹿だったんだろう。なんて、どうしようもなく世間知らずだったんだろう。
金田の居酒屋でのあの夜のことが、今目の前で起きているかのように思い出される。セクシーに見えると思って着ていったあの赤いドレスの私と、私から目を離せないでいたあなた。それが愛だと思ってた。私を素通りしていく他の男たちとは、あなたは違うんだって信じてた。
「やあ、俺は村上英一郎」あなたはそう言って、私はその場でとろけてしまいそうだった。
「橋本佳奈です」私はそう囁き返した。もう、とっくに恋に落ちていた。
私たちは店が閉まるまで話した。あなたは新しく警部補になった仕事の話をしてくれて、私は幼稚園で教えている話をした。あなたは家まで送ってくれて、玄関のポーチでキスをしてくれた。神に誓って、私はおとぎ話の中に生きているんだって思った。
その三ヶ月後、あなたはプロポーズしてくれた。あの時と同じ、玄関のポーチで。
「結婚の準備ができてるかわからない」あなたは緊張した男子生徒みたいに指輪の箱をいじりながら言った。「でも、君のいない人生なんて考えられないんだ」
この嘘つき野郎。あなたはちゃんと想像できてたじゃない。この三年間、毎日毎日。
「じゃあ、想像しないで」私は必死な馬鹿みたいにあなたの首に腕を回して言った。「ただ、私と結婚して」
『ただ、私と結婚して』ああ、なんてこと。私はあなたに、私という罠にかかってくれって、ほとんど懇願していたようなものだ。あなたが私を憎み始めるのも無理はない。
挙式の日、私が白無垢姿で参進の儀を行うと、あなたは目に涙を浮かべていました。愛が込み上げてきたからだと思ってた。今となっては、人生最大の過ちを犯したと気づいて泣いていたんじゃないかと思う。
まあ、昔々には、私たちにも幸せな時はあった。でも、永井翼が現れて、すべてを台無しにした。彼女が三年前、田中のパン屋の上のアパートに引っ越してきて、たちまち町中の男性たちが、彼女の姿を目にするや否や、まるで恋に取り憑かれたかのように彼女の後を慕うようになりました。
でも、あなたは最悪だった。あなたは結婚してたのよ、英一郎! 自分の命よりもあなたを愛している妻がいたのに、地位ある者にしか心を開かないような軽薄な女に心奪われ、すべてを捨てた。
最初は必死で無視しようとした。『巡回』と言いながら、一日に何度もパン屋の前を車でゆっくり通り過ぎるあなたの姿も。まるで彼女が特別な存在であるかのように、何気ない会話の中でも彼女の名前を持ち出すあなたの様子も。
「翼は、もっと街灯を設置すべきだと思ってるらしい」夕食の席であなたがそう言うと、私はお皿をあなたの頭に投げつけてやりたくなった。
いつからあなたは、新参者の女がどう思うかなんて気にするようになったの?
でも私は、自分の意見を言えない都合のいい存在になり下がってしまい、ただ微笑んで頷くだけだった。『どうかまだ私を愛していて』毎日毎日、そう考えていた。『どうか彼女のために私を捨てないで』
あなたはどんどん家に帰るのが遅くなった。「残業だ」とあなたは言ったけど、それが嘘っぱちなのはお互いわかっていた。この町には、あなたが定時で忙しくするほどの犯罪すらない。ましてや残業なんて。
あなたは彼女と一緒にいた。私は知っていたし、私が知っていることをあなたも知っていた。でも私たちは、何もかもが順調なふりを続けた。私が一日の出来事を尋ねると、あなたは単語一つでぶっきらぼうに答えて、書斎に消えていく。彼女にメールしたり電話したり、私の見ていないところで一体何をしていたのか知らないけど。
その時、私は完全にあなたを失ったと悟った。私たちの結婚は終わったんだと。そして、それを認める勇気もない臆病者なんだと。
英一郎の携帯が鳴り、彼は眉間にしわを寄せ、唇を一文字に結んでそれを見つめた。
「村上だ」と彼は答える。その声からは、苛立ちが滴り落ちるのがわかる。
「英一郎さん、私、加藤美代よ」ああ、やっと私のことを本当に心配してくれる人が。「佳奈ちゃん、一週間ずっと学校に来てないの。どこにいるか知らない?」
「どこにでもいるんじゃないか」と英一郎は言う。彼がどれほど気にしていないかを強調するためだけに、ゴミの一部を蹴飛ばしたようにさえ見えた。「休暇にでも行ったんだろ。あいつのことはわからん」
あいつのことはわからん?
あいつのことはわからん、だって?
私は三年間、一日も休暇を取ったことなんてない! 電話もせずに仕事を休んだことなんて一度もない! 私はただ消えたりなんかしないわよ、このクズ!
でも美代は、私の夫だった男よりも、ずっと私のことをよく知っている。
「佳奈ちゃんが誰にも何も言わずにいなくなるなんてありえないわ」彼女は声を荒らげ、怒り始めているのがわかる。「学期の途中で生徒たちを放り出すような子じゃない。何かあったのよ、英一郎さん」
「いいか、今こっちは事件現場なんだ」英一郎は、刻一刻と苛立ちを募らせながら言う。「この話は後でできないか?」
「事件現場? 何があったの?」
「ゴミ処理施設で死体が見つかった。もう切るぞ」
彼は彼女が返事をする間も与えずに電話を切り、まるで彼女を追い払いたくてたまらないというように、携帯をポケットに押し込んだ。
少なくとも、私がいないことを気にかけてくれる人がいる。美代は、私が自分の生徒たちを見捨てるはずがないと知っている。私に何か恐ろしいことが起きたとわかっている。この町全体で、本当に心配してくれているのは、きっと彼女だけだ。
携帯が、ほとんど間を置かずに再び鳴る。英一郎は画面を見て、私の血が凍るような何かが彼の顔をよぎる。今度は苛立ちじゃない。もっと悪い何かだ。
「ああ」と彼は答える。彼の声は、今度はまったく違っていた。もっと優しく。親密に。
「英一郎、何してるの?」その声は滑らかで、女性的で、ほんの少し訛りがある。「今夜、夕食でもどう?」
その声。
ああ、なんてこと。その声。
私、その声を知ってる。
「仕事中なんだ」と英一郎は言うが、美代と話した時のような苛立ちはない。むしろ、申し訳なさそうに聞こえる。「また今度でいいか?」
「もちろんよ、英一郎。手が空いたら電話して」
電話が切れ、英一郎は携帯をしまう前に、あまりにも長い間それを見つめていた。
あの声。今、私の頭の中で響いている。秒を追うごとに大きく、そして聞き覚えのあるものになっていく。悪夢の中で聞いた歌を思い出そうとしているみたいだ。
頭がズキズキし始める。死んでいるのに、どういうわけかまだ痛みを感じることができる。その音はどんどん大きくなり、もっとしつこく、まるで誰かが私の頭蓋骨に直接釘を打ち込んでいるかのようだ。
そして、脳の中でダムが決壊するように、すべてが溢れ返ってくる。
ああ、なんてこと。いや、そんなはずは。
私は、自分がどうやって死んだのかを思い出した。







