第5章

英一郎はパトカーの中で、永遠にも感じられる時間、ただそこに座っている。ハンドルをきつく、きつく握りしめて。電話は数分前に終わったというのに、彼は身じろぎ一つしない。頭をうなだれ、黒い髪が額にかかっている。最初、私は彼が、自分の妻が公式に死亡したという知らせを、ただ受け止めようとしているだけなのだと思った。

その時だった。一滴の水滴がハンドルに落ち、そしてもう一滴。

なんてこと。英一郎が、泣いてる。

彼の顔をもっとはっきりと見たくて、私は運転席の窓にふわりと近づく。彼の肩は、胸の奥深くから込み上げてくるような、静かで、途切れ途切れの嗚咽で震えていた。映画で見るような大袈裟な泣き方...

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