第6章
翌朝、私は英一郎の後を追って警察署へ向かう。昨夜目撃したことが、まだどうしても整理できずにいた。彼はぐっすり眠れたようで落ち着き払っている。まるで愛する女性の隣で安らかに眠った男のように。ほんの十二時間前に私が見た、あの深い悲しみの痕跡は微塵もなかった。
たぶん、あれは私の想像だったんだ。彼が泣く姿をあまりに見たくて、全部を捏造してしまったのかもしれないでも、私が見たものは本物だとわかっている。そしてその事実が、私の身を蝕んでいく。死んでいる身で言えたことではないけれど。
英一郎が自分のデスクに腰を下ろすか下ろさないかのうちに、加藤美代が入ってきた。彼女は一週間は眠っていないかのよ...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章


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