第6章

翌朝、私は英一郎の後を追って警察署へ向かう。昨夜目撃したことが、まだどうしても整理できずにいた。彼はぐっすり眠れたようで落ち着き払っている。まるで愛する女性の隣で安らかに眠った男のように。ほんの十二時間前に私が見た、あの深い悲しみの痕跡は微塵もなかった。

たぶん、あれは私の想像だったんだ。彼が泣く姿をあまりに見たくて、全部を捏造してしまったのかもしれないでも、私が見たものは本物だとわかっている。そしてその事実が、私の身を蝕んでいく。死んでいる身で言えたことではないけれど。

英一郎が自分のデスクに腰を下ろすか下ろさないかのうちに、加藤美代が入ってきた。彼女は一週間は眠っていないかのよ...

ログインして続きを読む