第11章
玄関で靴を脱いでいると、高嶺晴人が壁に寄りかかり、なんとも言えない嫌味な目つきで私を横目で見ていた。
彼はわざとらしく語尾を伸ばし、芝居がかった口調で言った。
「あ~結衣~、俺はやっぱりお前を諦めきれないんだ~」
私は能面のような無表情を崩さず、努めて自然に彼の茶番を遮った。
「お母さんが和菓子作ったって。食べに来てって」
さっきまでの熱演はどこへやら、彼は瞬時に背筋を伸ばした。
「行く!」
「天才音楽家・高嶺晴人、ソロコンサート開催」
そのニュースは瞬く間にトレンドを席巻した。
東京にいる友人から、興奮で裏返ったような声でLINE通話がかかってきた。
「お願...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
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