第3章
目を開けると、窓の外は東京の陰鬱な朝だった。
昨日雨に打たれたせいか、頭が錆びた鋸で引かれるように痛む。
鉛を流し込まれたように身体は重いが、それでも私は這うようにして起き上がった。
今夜は大学のサークル同期である鈴木の誕生日会がある。かつての仲間として、プレゼントもすでに買ってあるのだから行かないわけにはいかない。
スマホを手に取ると、LINEの未読通知があった。
差出人は椎名湊。
時間は朝の六時。
彼が送ってきたのは、彼のマンションの玄関にある長方形のガラス水槽の写真だった。
続いて、冷淡なメッセージ。
「金魚二匹、持って帰るの忘れてるぞ。いつ取りに来る?」
その写真を見て、心臓を針でつつかれたような痛みが走った。
あれは夏祭りの時、私が気まぐれでペットショップで買った琉金二匹。当時、私は幼稚にも彼らに名前をつけていた。赤い方を「ミナト」、白い方を「ユイ」。
彼のマンションで飼い始め、水の中で並んで泳ぐ二匹を見ていると、時折、幻のような幸福感に浸ることができた——まるで私と椎名湊も、この水槽の中の二匹のように、「家」という容器の中で互いを所有し合っているのだと。
たまに彼が餌をやっている姿を見ると、一秒だけ彼が私のものになったような気がした。
今となっては、そんな密やかな乙女心も、哀れで滑稽なだけだ。
彼が今、玄関で不機嫌そうに水槽を見下ろしている姿が目に浮かぶようだ。
指先を画面の上で少し迷わせ、私は返信を打ち込んだ。
「好きにして。捨ててもいいよ、もういらないから」
画面にはすぐに「既読」がついたが、返信は二度と来なかった。
私は寝返りを打ち、腕で乾いた目を覆った。
椎名湊は、生まれつきあんな人間だったわけではない。
神南湾から東京に来る前、まだ白いシャツを着た少年だった頃、彼の人生の軌道は無理やりねじ曲げられたのだ。
それは後になって知った過去の話だ。
椎名湊の母親は噂されていたような「愛人」ではなく、椎名家に正式に嫁いだ妻だった。彼女は夫を愛し、子供を産み、家を守っていた。
だが、椎名一族の当主——湊の父親にとって、結婚は企業買収の一環に過ぎなかった。より政治力のある家の娘を迎えるため、父親は母親に対して数年にわたる精神的虐待とモラルハラスメントを始めた。
彼は外で女遊びを繰り返し、あろうことか隠し子を家に連れ込み、元来穏やかだった妻を精神的に追い詰めた。
結局、湊の母親は重度の鬱病を患った。
灰色の冬の朝、彼女は神南湾の海崖に一足のハイヒールを綺麗に揃えて残し、身を切るような冷たい海へと飛び込んだ。
その後、湊の父親は確かに「身を固めた」が、それは罪悪感からではなく、厄介払いができたからに過ぎなかった。
あの日から、父子の間の亀裂は決して修復されることのない深い傷となった。椎名湊は二度とあの家には戻らなかった。
東京に来てから、彼は変わった。酒に溺れ、改造車を乗り回し、チェーンスモーカーになった。
彼は父親のように、あるいはその界隈の富裕層の子息たちのように生きる術を身につけた——夜な夜な遊び歩き、以前は女性に対して礼儀正しい距離を保っていた彼が、今では手慣れた様子で様々な女たちの間を渡り歩くようになった。その瞳からは光が消えていた。
神南湾の海風の中で屈託なく笑っていた椎名湊は、泡のように弾けて消えてしまったようだ。
私の記憶の中だけの、幻になってしまった。
夜七時、渋谷の海鮮居酒屋。
個室の扉を開けた時、私は初めて椎名湊の新しい彼女——宮下果歩に会った。
想像していたような派手なモデルタイプとは違い、彼女はとても上品で慎ましやかな女性だった。
オフホワイトのカシミアコートを着て、首にはバーバリーのチェックのマフラー。栗色のロングヘアはふわふわと柔らかく巻かれている。座っているだけで、笑うと目が三日月になり、極めて穏やかで無害な印象を与える。
一目で圧倒されるような美人ではないが、お年寄りに可愛がられそうな、家庭的な女性だ。
椎名湊の言った通りだ。
彼女は、彼が過去にクラブで知り合ったような、派手で媚びた女たちとは全く違う。
「この方が結衣さんですね?」
彼女は私を見ると、自ら立ち上がり、軽く会釈をしてから笑顔で私の手を握った。「湊君からよくお話は伺ってます。彼ったら嘘つきなんですよ、結衣さんのこと『芋っぽい』なんて言ってたくせに、こんなにお綺麗じゃないですか!」
彼女の手は柔らかく、そして冷たかった。
同じ女性として、私は彼女の甘い笑顔の裏に一瞬走った、品定めするような敵意を容易に感じ取った。
女の勘は恐ろしいほど当たる。彼女はおそらく、私と椎名湊の間にある「友達」という名の、実のところ境界線を越えた粘着質な関係にとっくに気づいているのだろう。
私が何か言い返そうとする前に、椎名湊が割って入った。
彼は自然に彼女の手を引き、その場にいる全員に紹介した。
「宮下果歩。俺の彼女だ」
個室が一気に沸き立った。
「うおーっ! これが噂の本命か!」
「湊が『本命の彼女』をこういう場に連れてくるなんて初めてじゃね?」
「おめでとう! 結婚式はいつだよ? ご祝儀弾むぞ!」
宮下果歩は頬を染め、小動物のように椎名湊に寄り添い、口元を綻ばせて何も言わずに微笑んでいる。
椎名湊は冷やかす友人たちを手で制し、どこか甘やかすような口調で言った。「やめろよお前ら、果歩は人見知りなんだから、怖がらせるな」
「ヒューヒュー、もう守っちゃってまあ」
「見せつけやがって」
皆が席に着き始めた。
これまでの数年間の習慣で、椎名湊はいつも私の右側に座っていた。今回も彼は無意識に椅子を引き、私の隣に座ろうとした。
私が注意しようと口を開きかけた時、宮下果歩が一歩先に私の前に立った。
彼女は微笑み、その柔らかく優しい声を、しかしはっきりと全員の耳に届くように響かせた。
「結衣さん、ごめんなさい。席、代わっていただけませんか?」
彼女は小首を傾げ、無邪気そのものの顔で言った。「だって結衣さんはまだ独身でしょう? 彼女持ちの男性の隣に座るなんて、やっぱり少し誤解を招くというか、遠慮した方がいいと思うんです。ね、そう思いません?」
個室の空気が一瞬、凍りついた。
私は眉をひそめた。先に座っていたのは私だ。それを人前で追い詰められるなんて、どういうことだ?
私は椎名湊を見た。彼が何か言ってくれるのを期待して。
しかし、椎名湊は私を一瞥すると、軽く私の肩を押した。
「果歩の機嫌を損ねるなよ。結衣、お前は向かいに座れ」
その瞬間、心の中で何かが砕ける音がした。
私は彼を一睨みし、何も言わずに立ち上がると、バッグを持って彼らの向かいの席へと移動した。
その夜は盛り上がった。焼酎やビールの空き瓶が何本も並んだ。
料理が運ばれてきた時、店員が湯気の立つ大きな海鮮鍋を置いた。
宮下果歩は鍋の具材を見て、甘えるように椎名湊の腕をつついた。「湊君、私そのスープ飲みたいな。すごく美味しそう」
椎名湊は隣の人間と話していたが、それを聞いて反射的に眉をひそめた。
「駄目だ。お前、甲殻類アレルギーだろ? 海老と蟹が入ってる」
空気が再び静まり返った。
宮下果歩の顔から笑顔が消え、私も箸を持ったまま空中で止まった。
数秒の死にそうな沈黙の後、宮下果歩は顔色を悪くしながら低い声で言った。
「湊君……私、海鮮は平気よ」
椎名湊は動きを止めた。「そうか? 俺の勘違いか」
宮下果歩は彼の方を向き、その目をじっと見据えて詰問するように言った。
「誰と間違えてるの? 誰が海鮮アレルギーなの?」
椎名湊の目が泳いだ。すぐに面倒くさそうに手を振る。「混同してたわ。最近仕事が忙しくて頭が回らないんだ。酔っ払ったな」
宮下果歩はそれ以上追求しなかったが、表情はすでに曇っていた。
彼女はふと顔を上げ、湯気の向こうから私を真っ直ぐに見つめた。
そして、取り分け用の箸を手に取り、真っ赤に茹で上がった大きな海老を掴むと、私の皿に入れた。
彼女は澄んだ大きな目を見開き、私に笑いかけた。
「結衣さん、この海老すごく新鮮そうですよ。食べてみてください!」
隣で酔っ払っていた友人が、今のやり取りに気づかず、呂律の回らない声で叫んだ。
「おいおい果歩ちゃん! 知らないのか? 結衣は海鮮駄目なんだよ、重度のアレルギー持ちでさ、昔一度ショック起こしかけたこともあるんだぜ!」
宮下果歩の手は引っ込まなかった。彼女は私を見て、淡々と答えた。
「あぁ……そうだったんですね」
宴もたけなわ、皆が程よく酔っ払っていた。
友人の一人が顔を赤くして、テーブルを叩きながら言った。
「湊、お前が三十までに身を固めるかどうかって賭けてたんだけどな、まさかこんなに早く真実の愛を見つけるとはな!」
別の友人も酔いが回って目を細め、空気を読まずに笑った。
「全くだよな。正直言うとさ、俺らみんな、湊と結衣は仲良いし、最後は二人がくっつくと思ってたんだよ。だって何年もずっと一緒だったし……」
宮下果歩の顔色は極限まで悪くなっていた。口元は笑っているが、目は氷のように冷たい。
椎名湊が突然口角を上げ、鼻で笑った。
「そうか?」
彼はグラスを揺らし、虚ろな目で全員を見渡し、最後に私の顔で視線を止めた。
「俺たちが付き合うわけないだろ?」
彼はまるでとんでもない冗談を聞いたかのように、肩を震わせて笑った。「俺と結衣? 冗談はやめろよ。俺たちは親友だ。一番大事な異性の友達。だろ、結衣?」
友人たちも気まずさを誤魔化すように同調して笑い出した。
「だよな! 今わかったよ、本当にあれだ、男女の純粋な友情ってやつか! ガハハハ!」
私も一緒になって笑った。涙が出るほど笑った。
「そうだよ、私が椎名湊と付き合うなんて。ありえないって」
酔っているせいか、椎名湊はふらりと立ち上がり、テーブル越しに手を伸ばしてきた。以前何度そうしたように、私の肩を抱こうとしたが、距離が遠すぎて指先が空を指すだけだった。
彼の頬は赤く、瞳は潤んでいた。彼は首を傾げて私に尋ねた。
「結衣、お前まさか……本気で俺のこと好きだったりしないよな?」
その瞬間、個室の喧騒が潮が引くように遠のいた。
私は必死に目を見開き、彼のその深い褐色の瞳の中に、ほんの僅かでも期待や引き留める色が混じっていないか探した。
けれど、何もなかった。
彼はただ真っ直ぐに私を見ていた。彼を安心させる答えを待っているかのように。私たちが本当に、彼の言う通りの純粋な「親友」であることを確認するかのように。
心臓を巨大な手で握り潰されたような激痛が走り、息ができなかった。それでも、口角は本能的に完璧な弧を描いていた。
「まさか。そんなわけないでしょ」
「ならいい」
椎名湊は満足げに頷き、重荷を下ろしたように椅子に座り込んだ。
「俺たちは、一番大事な友達だからな」
こんなに酒を飲んだのに、人生でこれほど意識が冴え渡ったことはない。
自分の十年の青春が、笑い話として幕を閉じるのを、私は冷めた頭で見つめていた。
私はグラスを持ち上げ、苦い液体を一気に飲み干し、小声で繰り返した。
「うん、一番大事な友達」
