第6章

携帯番号を変え、SNSのアカウントを削除し、これで湊との繋がりはすべて断ち切れたと思っていた。だが、私は椎名グループのコネクションを甘く見ていた。椎名湊にとって、彼がその気になれば、見つけられない人間などいないのだ。

見慣れた、しかし今は忌まわしいその番号を見て、私は覚悟を決めて通話ボタンを押した。

「結衣」

受話器の向こうから、椎名湊の押し殺したような声が聞こえた。背景には風の音が混じっている。

「もし拗ねているなら、いい加減にしろ。いつ東京に戻る? 迎えに行く」

遠くの港で花火が上がっては落ち、漆黒の海に飲み込まれていく。

私はスマホを握りしめ、寒風に向かって言った...

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