第8章

あの日、結局私は高嶺晴人との約束を果たせなかった。

目を赤くして隣の民宿へ謝りに行くと、高嶺晴人は何も聞かなかった。彼は玄関の段差に立ち、手を伸ばして私の髪を優しく撫でた。掌の温度が髪越しに伝わり、無言の慰めをくれた。

夜になって、彼がまた来た。

両親は親戚の家に挨拶に行っていてまだ帰らず、家には私一人だった。チャイムが鳴り、ドアを開けると、高嶺晴人が薄暗い門灯の下に立っていた。その長い指には、淡いピンクの小花柄のコットンショーツが引っ掛けられていた。

私のものだ。

瞬間、全身の血液が頭頂部に沸騰したように感じ、顔が燃えるように熱くなった。

私はひったくるようにその...

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