第98章 菊池社長、助けてください

村上龍平が自ら命令を下した。彼女の子供を救う手術をするなと。誰が逆らえようか。

「先生、先生」彼女は小さな声で啜り泣いた。「どうすればいいんですか、私、子供を失うなんて……」

彼女は考えた。いつか未来、子供の父親が現れた時、どう説明すればいいのだろう?

自分はこんなにも失敗者なのだろうか?

「申し訳ありません、私も……村上さんの意向に逆らうことは出来ません」医者は答えた。「それに、彼はあなたの夫です。彼には決定権があります」

夫か……ふん。

まさか、夫という立場が、村上龍平に彼女の子供の生死を決める権利を与えるとは。

「手術を受けます。子供を守ります。夫の言葉なんて、無効です!...

ログインして続きを読む