第31章

オリヴィア視点

耳の奥で、ぶうん……という嫌な羽音が鳴り始めた。蠅の群れに追い回されているみたいに、まとわりついて離れない。

義父は険しい顔で私の肘を支え、慎重に覗き込んでくる。

「オリヴィア? どこか具合が悪いのか?」

私は義父の手を振り払い、両手で耳を押さえた。義父の声が水の底みたいに遠い。私は彼の顔をしばらく見つめ、口の形だけで伝える。

――聞こえない。

胸の底から恐怖がせり上がり、誰かに縋りついて吐き出したくなる。

どうして? なんで、何も聞こえないの?

義父の口の動きで、病院へ連れていくつもりだと分かった。私は最後の綱にしがみつくみたいに必死で頷く。治療が遅れたら取...

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