第55章

オリヴィア視点

ほかのものなら、いくらでも自分の力で手に入れられる。けれど自由だけは、私にとって――出会えそうで、決して手が届かないものだった。

ダミアンが距離を詰めてくる。彼の纏う香水が、容赦なく鼻腔を占領した。鼻先がむずむずして――なのに不思議なことに、さっきまで込み上げていたつわりが、すっと引いていく。

……どんな香りなの。思わず聞きたくなるくらい。

彼は私の戸惑いなんて気づきもしない。指先が頬をなぞり、底の見えない瞳がこちらを射抜く。そこに感情は映らない。黒く澱んだ深い潭――覗き込んでも何も掴めない。

指と視線が、私の口元で交わった。

「欲張りじゃないな」

褒められたの...

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