第105章 口紅が崩れた

夏目霧子は俯いたまま、誰の顔も見られなかった。

耳まで真っ赤で、うなじのあたりまで淡い桃色に染まっている。

黒崎逸臣はそんな彼女を見つめ、喉仏を小さく上下させた。笑いそうになるのを、どうにか堪える。

彼は改めてマイクを取り上げる。

「はいはい、見物はそこまで。飯にしろ」

客席がどっと沸いた。

夏目霧子はメインステージから足早に降りると、そのままデザイン部のテーブルまで一気に歩き、椅子を引いて座った。目の前のグラスを掴み、勢いよく水を流し込む。

林田圓子が身を寄せ、声を落とす。

「姉ちゃん、唇の口紅、崩れてるよ」

夏目霧子は鋭く睨む。

「食べなさい」

「へへ……」

林田...

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