第108章 離婚するならさっさとしろ

「何を、ですか?」

夏目霧子が遮った。声は平坦で、感情の起伏が一切ない。

「そんなに落ち込むなって? そんなに悲しむなって?」

霧子は黒崎逸臣を見て、口元だけをわずかに引いた。

「黒崎逸臣。私が今、泣くべきだと思ってる?」

黒崎逸臣の喉仏がごくりと動いた。唇がかすかに揺れるのに、言葉にならない。

本当は言いたかった。無理するな、と。

悔しいなら罵っていい、殴ってもいい。

でも――そんなふうにだけは、しないでくれ。

あの目。

静かで、冷たくて、まるで自分が取るに足らない他人みたいな目で、見ないでくれ。

「離婚するなら、さっさと終わらせましょう」

夏目霧子は一歩引き、二人...

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