第110章 黒崎昌仁が交通事故に遭った

黒崎逸臣が病室の椅子に腰を下ろしてから、まだ二分も経っていなかった。

不意にスマホが鳴る。

彼は立ち上がり、廊下へ出て通話ボタンを押した。

受話口の向こうは、声が裏返るほど切迫していた。

「若様! どちらにいらっしゃいますか! 大旦那様が交通事故に――!」

執事の田中だった。

黒崎逸臣の血が、一気に頭へ駆け上がる。

「……何があった」

「外出されたところを後続車に追突されまして、前に頭を打ち、その場で意識を失われました。いま市立中央病院の救急で処置中です!」

市立中央病院――ここじゃないか。

黒崎逸臣は通話を切ると、踵を返してエレベーターへ駆けた。

救急の赤いランプが点...

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