第116章 彼は変わったのか

黒崎逸臣は去っていった。

病室のドアが閉まり、足音が遠ざかる。

水野菜々美は入口をじっと見つめたまま、たっぷり三十秒。頬には涙が残っているのに、表情だけがすでに別人みたいに切り替わっていた。

「お母さん……あの人、変わったと思わない?」

水野美月は、その言葉に手が止まる。

「何が変わったの?」

「分かんないの?」菜々美の声が震え、悔しさが滲む。「前はさ、私がどこか痛いって言っただけで、あんなに慌ててくれたのに。今はどう? 海外の専門医を呼んで調べる? あれ、心配してるんじゃない。私を疑ってるの。調べてるのよ!」

水野美月は引き出しを閉め、ベッドの縁に腰を下ろして、娘の手の甲をぽ...

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