第117章 取引

夏目霧子は、水野美月の手からアルバムをひったくるように奪い取った。

一言も発さないまま、背を向けて歩き出す。

背後で水野美月が「霧子」と呼んだ。

けれど、夏目霧子は振り返らなかった。

タクシーを拾い、後部座席に沈む。膝の上にアルバムを置き、最初のページを開いた。

写真は少し黄ばんでいて、角がくるりと反っている。

一枚目は、若い頃の父だった。白いシャツを着て、実家の庭の金木犀の下に立ち、穏やかに笑っている。

二枚目。

三、四歳の自分。

不格好な二つ結びで、アイスキャンディーを掲げ、前歯の抜けた口でカメラに向かってにかっと笑っていた。

鼻の奥が、つんと痛んだ。

何年も。ずっ...

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