第118章 手続きを済ませる

黒崎逸臣は、ベッド脇の椅子に腰を下ろしたまま、一晩を明かした。

夜中、夏目霧子が何度か寝返りを打ち、掛け布団を半分ほど蹴り落とすたび、彼は静かに立ち上がって、そっと引き上げてやる。

熱に浮かされているのか、霧子は何かぶつぶつと呟いた。言葉にならない音が喉の奥で溶けて、聞き取れない。

黒崎逸臣は身をかがめ、耳を寄せる。ようやく拾えたのは、たった一つの言葉だった。

「……お父さん」

黒崎逸臣の手が、宙で止まった。

そのまま、しばらく動けない。

空が白みはじめた頃、彼は立ち上がり、椅子を元の位置へ戻した。

ベッドの上の人影を一度だけ見て、布団の外に出ていた足先を押し込む。

上着を...

ログインして続きを読む