第120章 黒崎昌仁の遺言

水野菜々美はその場に釘づけになった。頭の奥でぶわっと耳鳴りがして、膝が笑う。

黒崎昌仁を案じたわけじゃない。怖かったのだ。

水野誠也も動揺し、顔に貼りつけていた余裕の笑みは粉々に砕け散った。

反射的に一歩退き、指先でズボンをぎゅっと掴む。言葉が、ひとつも出てこない。

老執事は黒崎昌仁を支えながら、扉の外へ怒鳴った。

「先生を! 早く先生を呼べ!」

回廊の奥から、ばたばたと足音が駆けてくる。

水野誠が我に返った。菜々美の手首を乱暴に掴み、低く言う。

「行くぞ」

引きずられるように、菜々美は走った。

駆けつけた医師と看護師の脇をすり抜け、病室を飛び出す。回廊を突っ切り、エレベ...

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