第148章 交通事故

裁判所を出てから、夏目霧子と萩原青真は、あてもなく街を歩いていた。

萩原青真は霧子のすぐ隣にぴたりと付き、周囲の気配に神経を張り詰めている。

「霧子さん、タクシーでグランドレジデンスに戻って、荷物まとめますか?」

霧子はトレンチのポケットに手を突っ込み、首を横に振った。

「……少し、歩いていたい」

胸の奥に三年も居座っていた重たい石が、ようやく完全にどけられた気がした。

息が、驚くほど楽だ。

さっき、裁判所の門前で見た光景。

黒崎逸臣と水野菜々美が肩を並べて立っていた、その姿は――確かに目に刺さった。

皮膚の下に残った棘みたいに、じくじく痛む。

けれど、もういい。

棘な...

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