第169章 G市に常住する

黒崎逸臣は、床にへたり込んだ水野美月に一瞥すらくれなかった。

散乱した室内を踏み越え、玄関をまっすぐ抜ける。

木下拓真が小走りで追いすがる。

「いちばん早い便でG市行きの航空券を手配しろ」

歩きながら黒崎逸臣はネクタイを乱暴に引き抜き、脇にいた護衛へ放り投げた。

「J市の仕事は副社長に全権委任。重要書類はメールで送れ。それ以外は俺を探すな」

木下拓真の足が、ぴたりと止まる。顔色が変わった。

「黒崎社長、明日の取締役会は――」

黒崎逸臣は車のドアを開ける。動きは一切止まらない。

「潰せ」

後部座席に身を沈め、ドアを乱暴に叩きつけた。

「夏目霧子の墓を見つけるまで戻らない」...

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