第19章 彼に離婚を迫る

黒崎逸臣は、夏目霧子の死んだような視線に射抜かれて、頭皮が粟立った。

恨みもない。愛もない。ただ、大火に焼かれたあとに残る灰――その一面の死灰だけ。

それが、どうしようもなく胸をざわつかせる。

その横で、黒崎雅美がなおも甲高い声を張り上げ、回廊に反響させていた。耳に障るほど、やかましい。

「なに、その顔。私、間違ったこと言ってる?」

ピンヒールを鳴らしながら夏目霧子へ詰め寄る。

「そもそもおじい様をあんな目にしたのはあんたでしょ。なのに今さら逸臣に泥をかぶせるつもり? あんた、少しは恥を知りなさいよ!」

夏目霧子は避けもしない。まばたきひとつせず、木偶みたいにそこに立っていた。...

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