第24章 彼女は去る気になる?

黒崎逸臣は病院ロビーの陰に身を潜め、爪が掌に食い込むほど拳を握りしめていた。

目の前――あの二人の距離が、近すぎる。

眼の奥が熱くなる。駆け寄って、浅野弦の薄っぺらい笑顔を叩き潰したい。夏目霧子に叫びたい。そいつは悪い男だ、と。

……だが、足が動かない。

自分はついさっきまで、別の女と「そういうこと」があったと噂を立てられている。そんな男に、霧子を咎める資格があるのか。

黒崎逸臣は勢いよく踵を返し、ホールを大股で抜けた。

そして電話をかける。

「出てこい。付き合え。飲むぞ」

――

バー・黄昏。

重金属の音が鼓膜を殴り、床までびりびり震えている。

黒崎逸臣は奥のボックス席...

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