第26章 とうにもうすっかり忘れていた

翌朝。黒崎逸臣は車で病院へ来て、夏目霧子を迎えに行った。

「このあと、俺と会社へ来い」

夏目霧子はほとんど表情も変えずに、こくりとうなずく。

祖父の指示なら、任された仕事はきちんとやる。それだけだ。

黒崎グループ本社ビルから二つ先の通り、交差点の手前で車が減速したとき。

「ここで降ります」

霧子はドアノブに手をかけた。

黒崎逸臣の眉間が一気に険しくなる。ブレーキを踏み、車体がすっと止まった。

「ここから会社まで500メートルある」

横目で彼女を見て、吐き捨てるように言う。

「俺はそんなに、連れて歩くのが恥ずかしい男か?」

霧子は落ち着いたまま、窓越しに遠くの高層ビルを一...

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