第28章 ぎこちない黒崎逸臣

水野菜々美は奥歯をぎり、と噛みしめ、顔が引きつる。

黒崎逸臣を呼び下ろすなんて、できるわけがなかった。あのカードは、自分が花屋の店長に頼んで代筆させたものだ。黒崎逸臣はふだん、こういう小細工じみた駆け引きをいちばん嫌う。もし彼を本気で引っ張り出してしまえば、恥をかくのは自分だけだ。

「……覚えてなさいよ」

水野菜々美は声を落とし、凶暴に言い捨てた。

くるりと踵を返すと、今度は甘ったるい表情に切り替え、夏目霧子を見下ろすように顎を上げる。

「お姉ちゃんがそんなに暇なら、地下2階の資料室で、ここ3年分の主要案件の原稿、全部持ってきて。デザインするのに参考が要るの。ついでに、業務もちゃん...

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