第34章 彼は愛人を選んだ

水野誠の足が宙で止まり、そのまま固まって動けなくなる。

回廊は、息が詰まるほどの静寂。

黒崎逸臣が大股で踏み込み、水野誠を乱暴に突き飛ばした。

凄まじい力に、水野誠はよろめいて数歩下がり、背中を壁に叩きつける。

「逸臣!」

体勢を立て直した水野誠は、床にいる夏目霧子を指さした。

「お前、正気か? この女を庇うのかよ! 菜々美をあんな目に遭わせたんだぞ! 俺が懲らしめて何が悪い!」

黒崎逸臣は見下ろすように、水野誠を睨み据える。

「彼女は俺、黒崎逸臣の妻だ。懲らしめるなら――お前の手が出る筋合いじゃない」

水野誠の胸が大きく上下し、顔が真っ赤に染まる。

「妻? お前がこいつ...

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