第39章 水野菜々美が夏目霧子を脅迫する

水野菜々美の声が個室に響き、隠しきれない得意げな色が滲んでいた。

同僚たちが息をのむ。

黒崎逸臣だ。あの黒崎逸臣が、いま目の前に生きたまま立っている。しかも、水野菜々美に腕を絡められたまま。

「く、黒崎社長、こんばんは!」

数人が噛みながら挨拶する。

夏目霧子は隅の席で、その光景を見て胃の奥がぐらりとした。

三日。連絡が途絶えていた。

大きな案件でも抱えているのだと思っていたのに。

結局は――水野菜々美の「大事な人」をやっていた、というわけだ。

そう思った瞬間、霧子は鼻で笑った。

手元のキャンバス地のトートを掴み、椅子を押し引いて立ち上がる。もう一秒だってここにいたくない...

ログインして続きを読む