第44章 偽の通報

専属秘書が社長室のドアを押し開けた。早口で、顔つきは険しい。

「黒崎社長、デザイン部のほうでトラブルです。警察が来ています。水野さんが通報して……奥様が盗みを働いたって」

黒崎逸臣は、サインをしていたペン先をぴたりと止めた。

数秒の沈黙のあと、万年筆を投げ捨てるように机に置き、大股で部屋を出る。

デザイン部は、水を打ったように静まり返っていた。

「虚偽通報で私を陥れた」

夏目霧子がそう言い放った瞬間、周囲は息をのんで言葉を失う。

水野菜々美は顔面蒼白で、爪を掌に食い込ませるほど握りしめたまま、反論ひとつできない。

まさか夏目霧子が、目の前で録音機を出してくるなんて――。

警...

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