第6章 夏目霧子が離婚を切り出す

消毒液の匂いが鼻腔を刺して、夏目霧子は無理やり目を開かされた。

視界いっぱいに広がるのは、真っ白な天井。

意識が戻った瞬間、何かを思い出したように、霧子ははっとして小さな腹に手を当てた。

――赤ちゃん!

「動くな」

次の瞬間、温かい手が肩を押さえた。

浅野弦がマスクを外す。白衣をまとった背の高い身体がベッド脇に立ち、眉間に深い皺を刻んでいる。

「子どもは大丈夫。けど、これ以上無茶したら……誰にも守れない」

その言葉に、背中に張りつめていた神経が一気にほどけた。霧子は力が抜けて、ベッドに沈む。

よかった。

子どもが――いるなら、それでいい。

「浅野先輩……ありがとう……」...

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