第63章 酒に薬が盛られた

ホテルの客室ドアが、内側から開いた。

夏目霧子が先に足を踏み入れる。

黒崎逸臣はのんびりとその後ろにつき、手慣れた仕草でドアを閉めた。外の喧騒も、探るような視線も、そこで完全に遮断される。

――中は、目も当てられない有様だった。

玄関には片方だけのハイヒール。少し進めば、男物のネクタイにシャツ、女物の上着までが床に散らばっている。

空気には薄いアルコールの匂いと、言葉にしづらい、情事の残り香。

キングサイズのベッドはぐしゃぐしゃで、掛け布団は半分がカーペットに落ち、枕もどこかへ消えていた。

入江和彦が上半身裸のままヘッドボードにもたれ、火のついていない煙草を指に挟んでいる。ぼさ...

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