第65章 不倫現場を押さえるみたいに

夏目霧子は菅田由実をマンションまで送り届けた。

エントランスを出ると、彼女はひとり、がらんとした夜の通りを歩き出す。

タクシーも拾わない。行き先もない。ただ歩道を、目的もなく前へ前へと進むだけ。

脳裏に焼きついて離れないのは、さっきホテルで見た光景だった。

黒崎逸臣が迷いなく、水野菜々美を「潔白」だと切り捨てるように守り抜いた、あの瞬間。

……笑える。

自分が、最初から最後まで、徹底的な道化だったみたいで。

そのとき。

黒い車が音もなく滑るように寄ってきて、彼女の歩く速度に合わせて並走した。窓がすっと降りる。

夏目霧子は気づかないふりをして、歩き続ける。

車も、焦らず、煽...

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