第66章 彼女は一文無しで家を出られる

「霧子。黒崎家を出て、お前は何で食っていくつもりだ」

黒崎逸臣は彼女の手首を乱暴に放り、半歩引いた。嘲りを隠そうともしない声音。

「忘れるな。今のお前は、ただのイラストレーターのアシスタントだろ」

襟元を指で引き、声がすっと冷えた。

「俺と離婚したら、1円もやらない。身ひとつで出ていけ。それでもいいのか?」

黒崎逸臣は、夏目霧子という人間を知り尽くしているつもりだった。

この3年、彼女は家にいて、彼に絡みつく蔦みたいに生きてきた。

だから金をちらつかせて現実を突きつければ、目が覚めて、また大人しく家に収まる。そう思っていた。

だが夏目霧子は彼を見上げても、予想したような狼狽は...

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