第67章 妊娠が判明した

翌朝。夏目霧子が自分のデスクに腰を下ろした途端、林田圓子がキャスター付きの椅子をすいっと滑らせて寄ってきた。声を落とし、内緒話みたいに囁く。

「霧子、社内のグループ見た? 今年のゴールデン・ブラシ賞、エントリー始まってるよ」

ゴールデン・ブラシ賞――国内イラスト界でも、最も権威のあるコンテスト。

審査員がテーマを提示し、イラストレーターはそのテーマに沿って一枚を描き、競い合う。

日ごとに「その日の1位」が選ばれ、勝てば一気に名が売れる。業界の空気が変わるほどに。

夏目霧子はマウスを握った手を、ぴたりと止めた。

結婚前。彼女は自分の作品で出すつもりだった。あと一歩で、あの舞台に届く...

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