第77章 距離を置く

冷戦状態、3日目。

夏目霧子は毎朝6時に家を出て、夜10時に帰ってくる。

黒崎逸臣は主寝室を出て客間に移り、同じ屋根の下にいながら、まるでルームシェアみたいな暮らしになっていた。

彼女は聞かない。彼も説明しない。

ふたりの温度は、氷点下まで落ちきっている。

その朝。霧子が会社に着くと――

エレベーターの扉が開いた瞬間、足を踏み出す間もなく、きらきら光る紙吹雪が顔面に降ってきた。

「おめでとうおめでとうおめでとう!!」

デザイン部の入口で、林田圓子がクラッカーを掲げて立っていた。表情は宝くじに当たった人みたいに大げさだ。

霧子は髪に絡んだリボン状の紙を指でつまみ、引きはがす。...

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