第80章 平手打ちされた一発

夏目霧子は水野美月の手を乱暴に振りほどいた。

「じゃあ、私は?」

水野美月は霧子を睨みつけ、子どもを諭すみたいな顔をした。

「どうして一回くらい、妹に譲ってあげられないの」

霧子は一歩引き、声がきゅっと硬くなる。

「何回譲ってきたと思ってるの。小さい頃は部屋も、新しい服も、お小遣いも。大きくなってからは仕事のチャンスも、人脈も。……今度は、夫まで譲れって?」

水野美月の唇が小さく震えた。

「そこまで大げさに――」

「大げさ?」霧子は遮る。

「母さん、自分が何言ってるか分かってる?」

「私があの子にいじめられてた時、母さんは一度でも私の味方になった? 一度でも、私のために立...

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