第82章 瀬戸海介から電話がかかってきた

この数日、日々は驚くほど淡々と過ぎていった。

夏目霧子は毎日きっちり出勤し、きっちり退勤する。昼は黒崎逸臣のオフィスで、おじい様が届けてくれた栄養食を食べ、午後には温かいミルクを一杯。

水野菜々美は入院中で、部署から一人いなくなったぶん、空気は少し静かになった。

――けれど、彼女と黒崎逸臣がオフィスでキスした、という噂だけは、静まるどころか勢いを増していく。

廊下で同僚とすれ違うと、相手は急に口をつぐむ。霧子が通り過ぎた途端、ひそひそ声が再開される。

給湯室でも同じだ。数人の女性社員が固まって話しているところへ霧子が入ると、まるで合図でもあったかのように、全員が一斉に黙る。

噂の...

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