第83章 なんでここだけ肉つかねえんだ?

黒崎逸臣が洗面を終えて出てくると、スマホが鳴った。

今度は黒崎昌仁からだ。

「今日は霧子を連れて戻ってこい。家族で飯を食う」

黒崎昌仁の話し方はいつも簡潔で、有無を言わせない圧がある。

黒崎逸臣は短く「分かった」とだけ返し、通話を切って寝室へ目を向けた。

ドアは半開き。ベッドの上では布団の塊がもぞもぞしていて、人をきっちり包み込んでいる。見えているのは、髪の先がほんの少しだけ。

黒崎逸臣は近づき、ベッド脇で二秒ほど立ち止まってから、布団を軽く引いた。

――そんなに潜って、息できるのか?

夏目霧子は反射的に布団を引き寄せ、触らせない。

「起きろ。おじい様が、うちに来て一緒に飯...

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