第87章 彼が気にかけているのは私だ

水野菜々美は顔面を蒼白にし、指をきつく絡めたまま離さない。

夏目霧子のさっきの言葉が、彼女の切り札を真正面からひっくり返したのだ。

「夏目霧子……調子に乗らないで」

水野菜々美は歯を食いしばり、喉の奥から声を絞り出す。

「勝ったつもり? 覚えてなさいよ。絶対、後悔させてやる」

夏目霧子は洗面台の前で、紙ふきんを一枚引き抜き、指先の水気を拭う。振り返りもしない。

「本当に危ない目に遭ったら、逸臣が先に守るのは誰だと思う?」

水野菜々美が一歩、距離を詰める。言葉の端に狂気が滲む。

「逸臣がいちばん大事にしてるのは、いつだって私よ!」

夏目霧子は紙ふきんをゴミ箱へ放り、ゆっくり振...

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