第88章 彼女の下腹部に食い込ませる

高架の上。ワイパーを最速にしても、フロントガラスの水の膜は拭いきれない。

窓の外は、白く霞んだ世界だった。

黒崎逸臣はハンドルを両手で握りしめ、骨ばった指の節が浮き上がっている。前方を睨むが、路面状況が見えないことが、理由もなく苛立ちを呼んだ。

夏目霧子は首を傾け、窓ガラスにもたれる。冷たさが、胃のむかつきをほんの少しだけ押し下げてくれた。

掌を腹に添える。薄い布越しに、そこにあるかすかな存在を確かめるように。

後部座席では、水野菜々美が唇を噛み、前の二人を見つめていた。胸の奥で、嫉妬がじわじわと膨らむ。

そのとき――前方に、赤いブレーキランプが一斉に灯った。

黒崎逸臣がブレー...

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