第89章 子ども……

「目、覚めた?」

そのとき、聞き慣れた声がすぐそばから落ちてきた。

夏目霧子は、必死に首だけを動かして横を向く。

浅野弦がベッド脇の丸椅子に腰かけ、検査結果の紙をめくっていた。

物音に気づくと、それを置き、ぬるめの水をコップに注いで差し出す。

夏目霧子は受け取った。指先がまだ震えていて、危うく落としそうになる。

けれど、飲まなかった。

ほとんど反射で、手が腹に触れる。指が小刻みに震えた。

「わ、私の子……――」

「大丈夫」

浅野弦が遮る。声は意識して柔らかい。

「赤ちゃんは無事。何も起きてない」

コップを握りしめていた力が、ふっと抜ける。

夏目霧子の目の縁が、一気に...

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