第96章 彼は謝罪した

黒崎逸臣がT市に着いたのは、すでに午前1時を回っていた。

T市の夜は、静かすぎるほど静かだった。

夏目霧子はベッドのヘッドボードにもたれて本を読んでいたが、灯りを消そうとしたそのとき、窓の外がふっと明るくなった。

車のライトが差し込んだのだ。

霧子は一瞬きょとんとして、布団をめくってベッドを降りる。裸足のままバルコニーへ出て、下を覗いた。

黒い車が門の前に停まっている。ドアが開き、運転席から黒崎逸臣が降りてきた。

スーツの上着はいつ脱いだのか見当たらない。シャツの袖は肘の下までまくり上げられ、ネクタイはゆるく垂れている。疲れが滲んでいるのに、それでも身にまとった品の良さだけは隠し...

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