第97章 あなたを見たくない

朝の光がカーテン越しに差し込み、夏目霧子の頬を淡く撫でた。

寝返りを打つ。けれど、隣はもう空っぽだった。

手を伸ばしても、残っているのは冷えた温度だけ。

シーツにはわずかな皺が残っている。昨夜、確かに「誰か」がここにいた証拠みたいに。

霧子は上体を起こし、重たいこめかみを指で揉みながら洗面へ向かった。

鏡の中の女は、顔色が少し青い。

身支度を終えて階下へ降りると、ダイニングから低い話し声が聞こえてくる。

階段の途中で、霧子の足が止まった。

黒崎逸臣が食卓に座り、シャツの袖をまくった腕で、向かいの黒崎昌仁に粥をよそっている。動きは丁寧で、妙に落ち着き払っていた。

「おじい様、...

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