第64章 私はただエルヴィンの秘書です

ナタリー視点

私はぐいっと押し返した。彼の指が、離婚証明書の端をつかまざるを得ないところまで。

「レヴィ。あなたの人生は、もう私とは関係ない」

目を逸らさずに言い切る。声に怒りも、温度も混ぜないよう注意しながら。

「これで、私たちは自由よ。……あなたにも私にも、いい未来があるといいわね」

言い終えて、淡く笑った。私がこの男に残せる、いちばん優しい仕草。たぶん、最後の。

「もう行くわ。さようなら、レヴィ」

法律事務所を出て、車へ向かう。一歩進むたび、背中に視線が貼りつくのが分かった。

その重さを、昔の私は喉から手が出るほど欲しがっていたのに。

――振り返らない。

私は迷いな...

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