第68章 ユーモアのある社長

ナタリー視点

私はスマホを絨毯に放り投げ、両手で口元を押さえたまま後ずさった。

――十分。

寝室の真ん中で、きっかり十分間。立ち尽くしてようやく、これは夢でも冗談でもなく、本当に起きたことなんだと飲み込んだ。

深く息を吸い、震える指でスマホを拾い上げる。チャット画面を開いた瞬間、心臓が嫌な音を立てた。

エルヴィンからのメッセージは午前一時頃。淡々と、出勤の念押しだけ。

それに対して私が返したのが――午前二時過ぎの「了解です、ベイビー」。

自分がどうやって入力したのか、まったく覚えていない。ぐっすり眠っていて、頭の中は真っ白だったはずだ。

エルヴィンからの返信はない。まだ見てい...

ログインして続きを読む