第71章 彼にキスする

ナタリー視点

私はファイルを開いた。

書かれている内容は、もはや執着の域だ。エルヴィンの一杯目のコーヒーは、エチオピア産のゲイシャ種。しかもナチュラルでなければならない。

昼休みのあとには紅茶。湯温は50℃厳守。深夜0時を回って仕事をしている場合は、氷でキンキンに冷やしたソーダ水。ただし氷は3個だけ。

ミシュランの星付きレストランでもここまで言うか、という注文を脳が処理し切る前に、ファイルが何ページも続いていることに気づいてしまった。

スーツ生地の好み、オフィスの室温の許容範囲、挙げ句の果てにはデスクライトの傾きの角度まで……?

これがフレッチャーの言っていた「仕事」ってわけ。で...

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