第75章 エルヴィンを枕にする

ナタリー視点

「今回の出張に、実務的な意味はほとんどない」

エルヴィンがそう言って、座席に深く身を沈めた。

「顔出しだ。写真を何枚か撮って終わり。状況を覚えてる最中の、新しい秘書が参加するにはちょうどいい行事ってだけだ」

私は奥歯でそっと頬の内側を噛む。――つまり私は飾り、ってこと? 結論が出ているなら、最初から私に訊く必要なんてないのに。

ハンドルを握るフレッチャーの手が、わずかに動いた。車体がふらりと揺れる。彼はバックミラーを素早く一瞥し、私を見て、それから慌てたように前方へ視線を戻した。

エルヴィンが目を開く。

「フレッチャー。なんで車が揺れる? 酒でも飲んだのか」

「...

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